2017年8月23日水曜日

うまく言葉にならない


 私は物書きの端くれだから、どういうことが起ころうと

「言葉で伝える」ことを意識しないといけないのであるが

今はちょっと、どう表現していいのかがわからない。

 


このブログの710日に書いた「知人」が亡くなった。

 


 

 

彼は私とは同年代で、とても責任感の強い、そして何より

やさしい人だった。

 

出会いはいつ頃だろう。

少なくとも10年近くにはなると思うが、彼はあるフランチャイズの

オーナーで、その顧客のひとりが私の母だった。

 

母の我がままにも辛抱強く、誠心誠意尽くしてくれていたが

自身のことが危うくなってきた母の代理として、私との

付き合いが始まったのだ。

 

もちろん店主と顧客という関係なので、そこまで深い付き合いでは

ないのであるが、お互い、世間話をしている内に

「介護の悩み」を吐露しあっていたのだ。

 

彼は性分なのか、行政に助けてもらうという発想がなく

長い間、困ったお母さまのめんどうをたったひとりで

引き受けてきた人だ。

 

「りんこさん、いつまで待ってたら、老人ホームってのに

入れてもらえるんですかね?」

 

徘徊の旅に出たお母さまを警察署に迎えに行き、自宅に戻った

明け方。そのまま仕事に行き、家に戻って来たら

お母さまはご自分の排せつ物で遊んでおられたという所での

会話だった。

 

私にはその時の会話が衝撃的過ぎて、それでこの本を書いた。

 

「親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ」(ダイヤモンド社)

 

「ひとりでは無理なんだよ!助けを呼んでいいんだよ」

 

その「助け」を出来るだけうまく、スムースに呼ぶ方法を

伝えなければ、介護で自分の人生を潰してしまう人が出続ける!って

強烈に思って、それで書いた。

 

その後、彼は介護認定調査員との付き合い方、或いはケアマネとの

連携方法などを模索しながら、同居介護を続けていたのだが

 

孤軍奮闘感は否めず、私は気になりつつも、そこまで深い付き合い

ではないので、ごくたまに近況報告を聞きながら、そのままに

なっていたのだ。

 

そして7月。

 

私は実母が亡くなったことを伝えなければと思い出し

彼に連絡を取ろうとした矢先に彼から電話が入ったのだ。

 

710日のブログに書いたとおり「病院から」だった。

 

彼の言葉に「生還する」という決意ではなく、ある種、悟りきった

ような「意思」を感じ、どう言葉を返せば良いかもわからなかった。

 

それでも彼は「自分がいなくなっても、顧客が困らないように」との

段取りを整えている最中だと説明してくれ

あくまで「お客さま優先」という生き方を崩さなかった。

 

うちの母が亡くなったのがこの春。

彼が「だったら、同じ舟で三途の川を越えたかもですね~」と

言っていたから、ほぼ同時期に彼もお母さまを亡くしたのだろう。

 

それから5カ月しか経っていないのに、彼の訃報を聞くなんて。

 

ひとりしかいないごきょうだいとは断絶していて

お母さまとの同居を終生貫き、独り身での仕事と家事と介護は

自身の健康を害すほど、壮絶だったんだろう。

 

彼は自分の人生をどう思っていたんだろう?

 

私は娘でもあるが、母の立場でもあるから、こう思うのかも

しれないけれど、もしわが子が私の介護のために

10年以上の日々を捧げてくれて、挙句にそのストレスで

自分が死ぬや否や、わが子も死んでしまうなんてことが

あったら、全力で「天国ブロック」をかける。

 

彼のお母さまは何を思うだろう。

 

人生は自分の思うようになんて全然、いかないけれど

私はだからこそわが子には伝えたい。

 

「我がままに自分の人生を生きろ」と。

 

10年介護が終わった私だが、達成感なんてものはあるわけもなく

ただただ虚しく、介護の日々は思い出したくもないことの羅列だ。

 

永遠に折り合いがつかないものに対し、彼は何を感じていたんだろう。

 

 

 

4 件のコメント:

  1. 7月10の記事にコメントを入れた匿名のものです。

    知人の方、亡くなられましたか。言葉もありません。心よりご冥福申し上げます。
    なんでこういう方が早く亡くなられるのでしょう・・・

    こんなお話を伺うと、自分の終い方も健康なうちにやらないといけないと思います。
    りんこさんの本を読んで勉強します。

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    1. 再びコメントを入れてくださってありがとうございます。

      彼の死は親会社からの冷たい「〇〇(←会社名)を契約
      解除しました。よって貴殿につきましては新たに
      こちらの会社が引き続き担当致します」ってな手紙で
      嫌な予感がしたので、彼の会社に問い合わせたんです。

      そしたら、女性が出たので、安心したら
      「実は私、親会社から委託を受けた電話代行業の者です」と
      言われ「彼はどうしています?」と聞いたら
      「亡くなりました」と言われた次第。

      あんなに頑張っていたのに仕事でも「契約解除」って
      言われてしまうのかと、悲しくなりました。

      来年は何とか私たち世代が考える終末準備の書籍を
      出すべく、ちょっと頑張ろうと思います。

      彼には、生前、もっといろいろ出来たはずなのに
      結果、出来ずで、私にはもうこれくらいしか
      彼への供養をする方法が思いつかないんですよね~。

      お心を寄せてくださって、少し気持ちが。癒えました。
      ありがとうございます!!

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  2. 併せて前の話も読ませてもらいました。お気の毒だけど、彼が選んだ人生だから、自分で受け入れて何も言わず、流れのままにいらしたのでしょうね。こういう人っていますよね。こういう人の気持に目をつぶって自分の利益を優先できる、、そういう人がまた、山のようにいるのが世間って言うものでしょうかね。残念だけど。子供たちには、わがままに、思うように生きよ!と、私も大声で言います。天国ブロック、、、なるほど、この呪術を使えるように今から鍛えて置くことにしようと思います。

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    1. 久子さん、ありがとうございます!
      久子さんは遠方であられても、きちんとお帰りになって
      親御さんのことを看ておられるので、本当に頭が下がります。

      周りを見ていても、自分の手は絶対に汚さないのに
      権利だけは主張するとか、その前に腐るほど文句だけは
      言ってくるとかいう人が結構な割合でいて

      でも、じゃあ、その人に天罰がくだるかというとそうでもなく

      結果、彼のように介護で疲れ果てて、それの終了が
      自身の人生の終了なんて理不尽が、これまた結構な数
      あるよなぁって思うと何ともやるせないんです。

      「天国ブロック」は私は実際に経験したような確信が
      あるので、実は使えるんじゃないか?って思っているのです(笑)

      コメントありがとうございました!

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